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「はい、到着!」
僕らは無事氷の洞窟の入り口へたどり着いた。
洞窟へ近づくにつれ寒くなるわ、真夏に半袖少女とスキーウェア厚着男2人組という組み合わせに近所の人から変な目で見られもしたが、無事、たどり着いた。
入洞時間は過ぎているため周りに人はいなかった。
「とりあえず、お兄さんの元へ行きますか」
僕らは持ってきていたカイロをまた数枚服に貼り付け、洞窟の中へ進んだ。
「あー寒ぃ、本当寒ぃ」
「ひっ?」
雪乃が驚くのも無理はない、人間でいう鳥肌が出た感覚で人間の姿から二足歩行の狼になっていたのだから。
「おい、獣になってるぞ」
「え!あ、悪い雪乃さん、その…寒くて、つい」
近づく狼一に雪乃は少し後ずさった。
「い、いえ…少し驚いただけですから。寒いの私のせいですし。…その、狼一さんは、狼なんですか?」
「…いや、こんなんでも一応人間だよ。…昔、森に入ったとき、姉さんが狼に襲われててさ、助けようと思ったら噛まれたんだよね。そしたら…まぁ、こんな体質?になってたんだよ」
「狼に噛まれたらそう、なるんですか?」
「んーどうだろ、実はあれも人狼だったのかもしれないし、よくわからん」
「お姉さんも、人狼なんですか?」
雪乃の質問に少し狼一の表情が固まった。しかしすぐに笑みを取り戻した。
「いや、たぶん違うとは思う。…俺が噛まれて痛みに苦しんでるときにさ、姉さんその狼に連れていかれてさ。…そしてまぁ色々あって顔名月と行動して、俺は姉さんを探してるってわけ」
狼一は寒さからか、過去を思い出してか、その拳は小さく震えていた。
「そう…だったんですね。すみません、つらい話させてしまって」
「いやいや、つらいっていうよりは、俺の不甲斐ない話って感じだし」
「見つかるといいですね、お姉さん」
「その前にまず雪乃さんの兄さん助けねぇとな」
狼一は雪乃の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「おいおい、依頼人にセクハラするなよ」
「してねぇよ!」
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