野分のまたの日

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「好き」 「諦めろ」 気づいていた。いや気づくしかなかった。 何百としてきたこのやり取りの中 どれだけ声を大にして叫んでも どれだけ努力をしても、聞きたい言葉が聞けないのは 最初に「好き」って言ったときから気づいていた。 だけど、もう一つ気づいていた。 私は、あなたのやさしさに甘えてる、ってことを。 縁というものは、指一本できれるものなのだ。 左にスライドして「削除」 たったそれだけ。 それをしちゃえば、私はあなたからさようならするしか方法がないんだ、って。 でも言えなかった。 忘れたい、という思いと、好き、という矛と盾 でもそれらの先にあるのは私の心で、 最強の矛と盾が私の心に攻撃をしてくるのだ。 なす術はない。泣くだけ。 そう壊れるのを待つだけ。 まるで台風のような、すべてを壊してくれる何かを。 「俺がいなくなれば、いいんじゃない?」 そしてやってきた。 「それは、いやだ」 「でも、もうどうしようもないじゃないか  俺は君の気持ちには答えられないし、君も次に進むことができない」 「あなたがいなくなったら、」 台風はいろんなも傷を残していく。 治る傷や、一生治らない傷を。 「あなたが幸せになるのかな」 台風の翌日は、何もなかったように青い空と輝く太陽が現れて、 無情にも、その太陽は、ずたぼろになった姿を照らす。 生きていくうえで、かならず、雨は必要だし、太陽も必要で それはどちらかにずっと偏っていてはいけないのだ。 雨の日が多い私への晴れを望む君は、「私」という犠牲を踏んででも青い空を見せるために去っていった。 それが治らない傷だとは知らずに。
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