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中間テストが始まった。
秀忠の学校では『入学おめでとうテスト』などという不可解な名前が付いている。
入学の祝いにテストをするとはどういう了見なのだろう。
クラスメイトは悶絶していたが、勉強が苦ではない秀忠にとっては単純に学校が午前で終わる日だ。
布団を干して掃除をし、衣替えでもしようかなんて思いつつ慣れた帰り道を歩く。
秀忠はいつもの橋にさしかかり、何気に店の方を見た。
例の少女がいる。
おいおい学校は? と一人で突っ込んでみたが同じくテスト期間中なのかと納得した。
それにしたって本当に何をしているのだろうかと心配になる。
そしてもう一つ人影が見えて、秀忠は足早になる。
スーツを着た男だ。
言い争っているとまではいかないが少女の本意ではないことは伝わった。
とにかくこいうのは嫌だ。身体が勝手に動く。
「何してるんですか?」
声をかけると男性は愛想よく笑い、少女に一言残して立ち去った。
「じゃぁね、親御さんにも話してみてよ」
男性の後姿を見送り、秀忠は躊躇しつつ少女の方に顔を向ける。
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