さよなら、ばぁば

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さよなら、ばぁば

「せっちゃん」  曽祖母の声で眼が覚めた。 「ばぁば……」  あたしは自分のベッドに寝かされていた。 「さよならをしなきゃいけない」 「え……」  心臓が鷲づかみにされた気がした。 「ばぁばが一緒じゃなくても、せっちゃんは大丈夫だから」 「イヤッ、イヤだよぉ!」  あたしはベッドから起きて曽祖母に抱きついたが、腕はすり抜けてしまった。  そんな、今まではつかめていたのに…… 「そう思い込んでいただけだよ。ばぁばは、ここにはいられない」 「どぉして? あたしが、ばぁばがいきていないって、きがついたから?」  曽祖母は首を左右に振った。 「せっちゃんが勇気を持てたからだよ、現実と向き合う勇気を。  それに知っているでしょう? 死者はこの世に留まるべきじゃない」  そして、あたしを安心させるあの笑みを浮かべた。  でも、今回ばかりは少しも安心なんかできなかった。
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