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図星だった。結局、冬頃に体調を崩して、より思考が不明瞭になって、期日だけが迫ってきてしまった。その時も、深海さんには何も相談しなかった。
朦朧とした僕が出した決断は、なにかと助けてくれる羽多ちゃんとこれからも一緒に居た方がいいだろうという浅はかな計算だった。事実、間違いではなかった。そもそも、成績よりも普通の生活を送るだけで精一杯。三つある文系クラスの中でも、また同じ教室に居られたのは、教師陣も初めからそれに気付いていたのだろう。
「来年は、羽多とお前は別のクラスにしようと検討している。羽多もお前のことを放って置けないみたいだし…これをきっかけに、夏野にはちゃんと自分と向き合ってもらいたい。あと、お前の体調のことも含めて保護者の方とは一度面談をしたい。無理にとは言わないが…」
こうして10分程度の面談が終わり、職員室のドアの前で何気なく携帯を見ると、羽多ちゃんが屋上前の階段で待っているというから、フラフラとそちらへ向かおうとした。
途中、深海さんに電話をかけたが、電波の届かない場所に、と機械音声で告げられた。あの路地は奥へ行くほど繋がらない。いや、電話が通じたところで彼は頑なに。そこで、突然気力がなくなって、廊下の隅に座り込んだ。
羽多ちゃんがいない教室ってなんなんだろう。皆目、見当もつかない。僕が困ると分かっていてやっている。嫌がらせに思えた。羽多ちゃんのためなのは本当かもしれないが、僕の狭いせめてもの世界への残酷な介入だ。
得意だった化学、数学。苦手な国語、英語。文理選択を間違えていたのは二年生になってからずっと分かっていた。悲惨なテストの結果を見て、思い知らされてきた。
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