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どれだけの砂糖が溶けていったか分からないコーヒーを手渡され、自分の指先の冷たさに驚いた。冷めるのを待っているうちに、刻一刻と暗くなっていく窓の外を眺めていると、また頭がぼんやりとして来た。この耐えられない眠気の正体は。まるで誰かに後ろから意識を抜き取られているようだ。まるで冬の間、僕が起きていることを食い止めるようだ。まるで、誰かが意図的にやっているかのように、僕にとって全く不可解なタイミングで、眠りに落ちる。
まるで冬の夜空を見てはならないという不可思議な一つの約束を言い渡された時のように気味が悪い。
数秒気を失っていたのか、数時間経はったのか分からない。僕がデスクを占領してしまったから、帰ってきていた深海さんは立ったまま書類を読んでいた。磨りガラスの窓の外は、夜の闇に覆われていた。
「起きたか。帰るぞ、歩けるか?」
「はい」
西さんに貰ったコーヒーは結局、口をつけなかった。西さんは僕と深海さんに会釈をして、またパソコンと向き合っていた。
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