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私はこんなにも世界がちっぽけで、何かに生かされていることに気がつくことも、目を向けることもしなかった。
いや、知らず知らずのうちに見ていたし感じていたのかもしれない。
12月24日珍しく東京にも雪が降っていた。僕はクリスマスに彼女のプレゼントを買うために商店街の小さなアクセサリーショップに、雪でアスファルトの見えない歩道を小走りで向かっていた。
今ではクリスマスならではのイルミネーションなんてものはまず見かけない。もう明日が保証されない世の中で生きていく上で最低限の事しかしなくなっていた。
地球が狂い始めたのは2年前のことだった。太平洋に巨大な隕石が落ちたのだ。世界各地に被害が出て、日本にも大きな津波が襲い、隕石に付いていたウイルスが充満した。アニメや映画などの綺麗で一瞬で何もかも消えてしまうようなものではなかった。
現実は残酷で痛みを残す。
苦しみながらも死なない人が多くいる。一瞬で痛みも感じず死ねたらどれだけ幸せなことだろう。死ぬ恐怖より死ねない恐怖が勝っていく。
彼女もまたウイルスにかかっていた。
医者や科学者ではないから詳しい症状はわからない。ただ、痛みが激しいこと、完全に治す薬がないこと、少なからず死が待っているということ、知っているのはこれぐらいだった。
半年前、進行を遅らせる薬が作られた。だが副作用があった。
半年前から投与された1万人のうち半数以上の人が苦しみに耐えきれず、自ら死を選んでいる。投与されたら激しい痛みで精神が病み、死を喜びにすら感じるとテレビで話していた。
僕は彼女に買ったクリスマスプレゼントを渡すために病院の屋上に行く。夕日が雪に反射して目が霞む。
「プレゼント買って来たんだよ!!」
僕は一歩ずつ踏みしめるように歩く。
「大丈夫、こわくないよ..」
笑顔で僕は君に言う。
「今、そっちにいくね......」
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