2/2
前へ
/2ページ
次へ
 久しぶり。  これ、旅行のおみやげ。気に入ってもらえると嬉しいわ。  ええ、ニューヨーク、行ってよかった。  大都会とはいえ、東京とはちょっと違っていたわ。人種のるつぼとか、言語とか、そんな教科書みたいな話じゃなくて、距離感や感覚みたいなものかしら。言葉で伝えるのは難しいわね。行けばわかるわ、じゃ駄目よね。そうね、カップケーキの話をするわ。  私ね、カップケーキを食べたの。    どのガイドブックにも載っているような、有名なカップケーキ屋さんよ。ショーケースは女の子の夢みたいだったわ。  どれにしようか悩んでいたけれど、どうしても気になるのがあって。    それは、青かったの。  ペンキのようなクレヨンのような艶のある青。空のような遠さも、水のような厚みも、あじさいのような秘めやかさもない、青としか表現できない青。  私ね、そんな色のケーキを見たの初めてだったからびっくりしちゃった。  ほら、青って食欲を抑制する色なんて言うじゃない。それが食べ物なのが信じられないような気がして、目が離せなくなってしまったの。そしたら、お店の人が言ったの。 「綺麗でしょう?」  その言葉。  私、自分が何を感じているのか、わかっていなかったのね。    綺麗なものを綺麗と言えることって、素敵ね。  美味しかったかって?  ふふ、お砂糖がジャリジャリする甘いクリームだったとだけ言わせてもらおうかしら。  とっても綺麗な青だったわよ。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加