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久しぶり。
これ、旅行のおみやげ。気に入ってもらえると嬉しいわ。
ええ、ニューヨーク、行ってよかった。
大都会とはいえ、東京とはちょっと違っていたわ。人種のるつぼとか、言語とか、そんな教科書みたいな話じゃなくて、距離感や感覚みたいなものかしら。言葉で伝えるのは難しいわね。行けばわかるわ、じゃ駄目よね。そうね、カップケーキの話をするわ。
私ね、カップケーキを食べたの。
どのガイドブックにも載っているような、有名なカップケーキ屋さんよ。ショーケースは女の子の夢みたいだったわ。
どれにしようか悩んでいたけれど、どうしても気になるのがあって。
それは、青かったの。
ペンキのようなクレヨンのような艶のある青。空のような遠さも、水のような厚みも、あじさいのような秘めやかさもない、青としか表現できない青。
私ね、そんな色のケーキを見たの初めてだったからびっくりしちゃった。
ほら、青って食欲を抑制する色なんて言うじゃない。それが食べ物なのが信じられないような気がして、目が離せなくなってしまったの。そしたら、お店の人が言ったの。
「綺麗でしょう?」
その言葉。
私、自分が何を感じているのか、わかっていなかったのね。
綺麗なものを綺麗と言えることって、素敵ね。
美味しかったかって?
ふふ、お砂糖がジャリジャリする甘いクリームだったとだけ言わせてもらおうかしら。
とっても綺麗な青だったわよ。
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