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「何者なんだ、あれは」
青く広がる海で海産物を取っていた、男女数人の若者は、船が砂浜に着岸しているのを見た。
若者達は、顔に入れ墨があり、麻で出来た服を着ているのに対し、岸に着いた者達は、襟のついた衣服に、腰帯を着け、いわゆる大陸風の服装である。だが、若者達にとっては、初めて見る人々であった。
「とにかく、一度もどって村長に話しましょう。私たちで判断できないわ」
少し、気の強そうなまとめ役の少女がそう言うと、みな納得し、村へと戻る事になった。
「ふむ、それは渡来人じゃな。他の村で、そう言った話を聞いたことがある」
「渡来人?」
「海の向こうに住む者のことじゃ。儂もまだ見たことがない、じゃが儂らと話す言葉が違い、文化も違う、無用な接触はせぬことじゃな」
そう言われた若者達は、みな動揺を隠せぬようでありながらも、興味はあるようで、村長の家を出ると、口々に話をする。
「なぁ、渡来人ってどんな奴らだと思う?」
「わかんねぇなぁ、近づくなって言ってたし、いきなり襲ってくるような連中なんじゃないのか」
「見に行ってみないか、どんな奴らか気になるだろ」
男達はそんな話をしている中、唯一の少女が割って入る。
「あんたらねぇ、近づくなって言われたばっかだろ。大人しくしてな」
そう言われた男達は、肩をすくめるも、承諾することになっていた。
渡来人達は、彼女ら、いわゆる縄文人と未来で呼ばれる者達と離れた場所で、住居を構えていた。
数年の間に開拓をして、水田を作り、稲作文化を広げていった。縄文人達も、かつての渡来人が持ち込んだ文化で、稲作自体は行っていたのだが、効率の良さがちがい、渡来人の水田は発育がよかった。
縄文人達は、採集を基本として、一部栽培などもおこなっているも、安定した食料調達は出来ず、年によっては食糧難になることもあった。保存食も作ってはいたものの、それだけですべてをまかなうのは難しいのである。
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