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『俺と月下咲夜がヤりまくってる』
ただうだるように暑いだけの退屈な夏休みがやっと終わって、久しぶりに学校に行ったら、そんなしょうもないウワサで持ち切りだった。
まじかよ、聞いてねーぞ。月下サンって当然処女だったよな? チチでかい? ヤりまくってるって毎日? 月下サンでもやっぱエロい声とか出すの?
朝っぱらから下世話な質問をする男共を「うるせー」「ほっとけよ」でなんとかやり過ごしていたら、朝のホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴った。
「おーお前ら、早く席つけー」
俺らのクラスの担任の佐藤センセーは、教師になって二年目の、今年で24才。日本で一番多いかもしれない「佐藤」という苗字は当然他の先生とかぶるから、生徒からは、竜也という下の名前を取って「りゅうちゃん」と呼ばれている。
高二の俺らとは7コ離れてるけど、やたら童顔で、俺らとあまり変わらなく見える。人懐っこくて悪ふざけが好きで、先生ってよりは先輩くらいの距離で生徒に接するタイプだ。
そんなりゅうちゃんが教壇に立って、今日から二学期でうんたらかんたら……なんて珍しく真面目な話を始めた。でも、俺はさっきのウワサの件で上の空だ。
ウワサってのは、伝わる度に話を盛られて、大抵尾ヒレがつくもんだってのはわかってる。にしたって、ハデな尾ヒレ付き過ぎだろ……。
どうしてこんなウワサがたったのかは、なんとなく見当がつく。けど、俺と月下がヤりまくってるなんて事実は、世界中のどこ探したって存在しない。
ヤりまくってるどころか、俺は彼女に指一本触れたことないのだから。
だって──。
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