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「伯爵様のお墓がお庭にあるとは思いませんでした。妹もビックリしていましたよ」
トニヤは伯爵夫人の私室に通されると、肩掛けにしていたバッグからフランス人形を引っ張り出した。窮屈なバッグから解放されたマリーベルは、ブルブルと大きな身震いをしたので、被っていたボンネット帽子がずれてしまった。
「庭園に納骨堂を作らせたのは、夫のアイデアと聞いています。ずっと以前ですが、仮死状態からの蘇生が話題になった事がありましたでしょう。万一、自分の身に蘇生が起きても良いように、棺桶には呼び鈴と空気孔と縄梯子が付いていますのよ。呼び鈴が鳴ったら、すぐに使用人が駆けつける手筈になっています」
「伯爵は、早まった埋葬の可能性を恐れていた、のですね」
「くだらない三文記事の読み過ぎですわ」
ロレダーノ伯爵夫人は、身振りでマリーベルのあごを上げさせると、ボンネット帽子のあご紐を結び直してやった。そして小さな人形が痛がらないように、マリーベルの手足をそっとつまんで、その弾力を確かめた。
「初めて見た時は驚きましたけれど、すごく可愛らしいお人形ですわね。この小さな体の中身が木綿だけだなんて、とても信じられませんわ。この中に宿っているのは、本当にあなたの妹さんの魂なの?」
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