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さて、毎日せっせとキャンバスに向かっていたが、トニヤの描く絵はほとんど売れなかった。なぜなら彼の絵は、キャンバス一面にゴチャゴチャと絵具が散乱していてまとまりがなく、いったい何が描かれているのか……と、見る者を非常に苦しませるせいだった。
トニヤは作品が出来上がると、王都の中心部に近い場所に位置する、アニー・フォースター画廊に持ち込む事にしていた。アニーは昔、公立小学校の教師をしていた時期があり、トニヤはその時の生徒だった繋がりがあったからだ。
そして今日も、トニヤは自信作を携えて、スペイン風のステンドグラス装飾が見事なアニーの画廊にいた。だが長毛三毛猫の女主人は、かつての教え子を前にして、苦笑交じりにこう言い放った。
「トニヤ、あなたの描く作品は非常に素晴らしいわ。未来の才能のようなものを感じるし、私はあなたの作品が好きよ。でもね、王都にいるのは、古典主義でアカデミックな作品が大好きな買い手ばかりなの。芸術の都パリならともかく、王都で売ろうとするには前衛的すぎるのよ」
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