2 トニヤ・ジョッセルは、いつでも腹ぺこである

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 女主人の言う事ももっともだ、とトニヤも理解していた。トニヤ自身も自分の作品について、絵の上下を間違える事が時々あるからだ。 「この前も言ったけれど、生活するために描く絵と、探求するために描く絵とを上手に切り離さなきゃ。もっとわかりやすい庶民的な主題を描くと良いのよ。たとえば若い女猫のヌードとか。だったら買い手を探してあげられるわ」 「アニー。だから僕は、あなたの言うように、それを描いて来たんですよ」 「ええっ、これがそうなの?」  画廊の女主人は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。 「ごめんなさい。てっきり私は、どこかの海岸を描いた風景画かなぁ……と思っていたわ」  アニーは少々憐みのこもった眼差しで、かつての教え子を見た。トニヤはすっかり打ちひしがれて、うつむいてしまっている。アニーは話題を切り替える必要を感じ、やれやれとため息をついた。
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