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「パトロンか……夢みたいだ。いったい何をすれば……?」
「あなたの才能を使うのよ。絵ではなく、もう一つの方を」
「もう一つの……。もしかして、昔の仕事がらみかな? だったら、あまり関わりたくないのだけれど」
トニヤは仕事を受けるか躊躇した。しかし、先ほど食事の話をしたせいで、腹の虫がグウグウ鳴き出してしまった。それも今日は特別音が大きい。贅沢が言える立場ではないようだ。
「そうだね……。やるよ」
「そうするべきだわ。トニヤ、あなたは元警官だったわね」
「そうだよ。三年前に辞めたけれど。もしかして、アルバイトって事件がらみなの?」
「違うわ。でも、どうかしら? よくわからないけど」
「嫌な予感がするね。アニー、ひょっとしてこのアルバイトは……」
「その通り。トニヤ、あなたは幽霊を見ることができて、なおかつ捕まえる事ができるのよね」
ダメ押しをするようにして確認されると、トニヤは両手で頭を抱えて、ヴニャーと低いうめき声をあげた。その様子を見た長毛三毛猫の女主人は、耳まで口角を吊り上げるようにして微笑んだ。
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