第一章 出逢い

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 聖夜の意識が夜空から地上に戻ってきた時、誰かが立っているのに気が付いた。  公園の真ん中に設置された明かりがギリギリ届かない所。  そこに影法師は立っている。  聖夜は驚き、ブランコの鎖を握る手にも力が入った。  ……二人の間に静かな時間が過ぎる。  動かない影法師を見詰めていたが、聖夜はふと力を抜いた。 (何でもない、のかな)  聖夜はブランコを微かに揺らしながら、また月に視線を戻す。  聖夜は突然の来訪者に警戒を解いたばかりか、マジマジと見てしまった自分を恥じた。  ここは公園。誰が来たって良い(おおやけ)の場所なのだから。 「……あなたは良い人?」  突然声がして、聖夜の意識はまた地上へと引き戻される。  影法師は公園の明かりへと踏み出していた。  黒髪に黒い服。  影から出てなお黒い女の子。  輝く髪。小さくて整った顔立ち。透き通る肌と華奢な体が儚さを感じさせる。  正に美少女だった。 「あなたは良い人ですか?」  目を奪われ、何も言えずに居た聖夜に女の子はもう一度聞いた。  聖夜は戸惑いながらも口を開く。 「普通です」  後にもっと気のきいた事を言えればと聖夜は後悔する事になる。  それでもこれが、聖夜と(かえで)の出逢いだった。
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