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第一章 出逢い
加藤聖夜は夜の公園で、一人ブランコに座っているのが好きだった。
この公園に来るのは、大体今日みたいな塾帰り。
公園の周りを囲む様に団地が建っており、いくつもの窓からは明かりが漏れている。
あちらでも、こちらでも。
聖夜はかけていた眼鏡をそっと外すと、団地を見回した。
ボヤけた光は、あたかも夜空に浮かぶ星のようにも見える。
小さくもなければ瞬きもしない。
図体ばかり大きく、何の面白味もない。
ただそこで光っているだけのつまらない星。
聖夜は眼鏡をかけ直すと、今度は夜空を見上げる。
小さな星達は窓の明かりや街灯にかき消されてしまっていた。
そこに居るはずなのに見えない。
そんな星達に聖夜は同情を禁じ得なかった。
そして聖夜は月を見詰める。
今夜は満月。
大きく、丸い月が聖夜の事を照らしていた。
自ら決して輝こうとしなくても、陽の光を浴びて輝く月。
何の隔たりもなく、全ての者へ光を届けてくれる。
そんな月が聖夜は好きだった。
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