0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
マイラ星のリーラ国の首都・ラドに、大学がある。マンモス大学。秋になると、そのキャンパスの木々の葉が落ちる。教員は僕のことを大切にしてくれるのだが、それが本当ではないように思えている自分もいた。大教室で日記を書いた。売店ではトマトピザやドーナツ、お茶を買った。僕は孤独だった。
日記に、「僕は一生恋ができないのかもしれない」と書いた。そうしたら、天使が見ていたかのように、大教室の入り口に、一人のかわいい女性が現れた。彼女はずっとこっちを見ていた。
「ここ、授業始まらないですよね」
女性は言った。
「はい。僕がたまたまいるだけです」
女性は一番後ろの席に着いた。
二人だけの、圧迫感のある時間。
これから何をすればいい? 恋愛って、妙なるものだと思っていた。そうなのかもしれない。でも、僕はただ緊張した。僕はいったい何なのだろう。このキャンパスに来ている僕は何なのだろう。
思い切って振り返る。女性は笑っている。
「レリアっていいます。私が理想の女性じゃないからって、見限らないでね」
「ダロスっていいます。よろしく……」
僕らは二人でキャンパスの中の書店と、食堂に行った。書店では詩集を買ったし(親の金で大学に通っている僕ら……)食堂ではパフェを食べた。
「秋だね。秋の風を受けて枯れ葉が舞うのを見ていると、何だか悲しくなるの」
レリアは言った。茶色の髪が風に吹かれる。
僕ははっとする。このために生きてきたのかと。
「どうしたの」
レリアは微笑む。その瞬間、世界の九十八パーセントが僕らを祝福しているように感じた。
では祝福しない二パーセントは何なのか。それはわからない。僕の中の影なのかもしれない。
駅で。
「また会えるように。きっと、会えると思うけど」
レリアは手を振った。
レリアとは反対の方向に走る電車に乗った。人生がこうして開けるとは思わなかった。でも、人生は何度も何度も、打ち寄せる波が砂の城を壊していくように、僕を悩ませてきた。でも、もういいじゃないか! これからは……
自宅に帰ると、母が魚介類の鍋を作って待っていた。
「ロブスター、鱈、キンキ、ワタリガニ、アサリが入ってるよ。あと、お前の好きな春菊と舞茸だ。ヨーグルトで味付けしたぞ」
「ありがとう、母さん。父さんは?」
「遅くなるって」
最初のコメントを投稿しよう!