大学のキャンパスにて

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 きっと人生が鉛になってしまうには、何らかの間違いがあるのかもしれないが…...  魚の鍋を食べて、バターのかかったバゲットを口に入れる。僕はまだ十八歳。恋を知って間もない。光り輝いていた海面。同級生たちとした遠泳。僕は鉛になった。同級生たちに親しめない何かになっていった。でも今の大学の文学部に入れてよかった。  風呂に入る。浴槽に入れる使いきりの入浴剤は白く濁った。  僕は何のために生きているのだろう。それは、心理学者によると、発達段階を健全に進んでいくためなのだ。良い人生のために。  次の朝、大学に行くと、レリアは売店の前の自動販売機の傍らで待っていた。 「ダロス、おはよう!」  レリアは手を振った。  涙が出てきた。今までの鉛の世界は何だったのだろう。恐ろしい形象が僕を悩ませてきた。それは幻だったのだろうか。  でもいい。多分大丈夫……  レリアは僕の手を握った。少し汗ばんでいるレリアの手のひら。僕の手は汚くないか。……思い過ごしだろう!  一緒に哲学の授業に出た。教授がこう言った。 「人は、人生の中で様々な悩みに出会います。それを乗り越えていくために、諸君は大学に来ましたよね? 諸君の悩みは何ですか? いまアンケート用紙を配りますので、悩みを書いてください」  白い紙に、僕は「仕事をしていけるかどうか」と書いた。僕は急ぎ過ぎているようにも思えた。他のみんなはもっとゆっくり書いているようだった。  やがて紙は回収され、教授の手に収まった。 「これは助手が読んでパソコンのデータにします。来週、これについてコメントしたいと思います」  授業が終わった。  校舎の中の紙コップ式の自動販売機で、僕はレモンソーダを飲んだ。切ない味。せつなさが胸を引き絞れば、僕は鉛かもしれない。 「レモンソーダっておいしいよね」  レリアは言った。 「おいしい。カモミールソーダもおいしいよ」  僕は答える。  しかし、そんな幸せも長くは続かなかった。  ある日、レリアと会えなくなった。  レリアに何があったのか。僕のことが嫌いに? それは鉛の思考だ。  別の理由があるのかもしれないけれど……  家でレリアに電話をした。 「もしもし、レリアです」 「ダロスです。……何で大学に来なくなったの」 「しばらく病院で療養しなくちゃならないから」
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