第5章 三つ下の弟

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第5章 三つ下の弟

今日子と違って優作はよく怪我をした。 小学校の頃はサッカー 、高校の頃はレスリングで何度も骨折していた。 体もそう強い方ではなく すぐ熱を出した。 豚肉など食べた次の日には、じんましんが出て唇が腫れ 病院で処方される水薬を君枝に代わって今日子が貰いに行く事もしょっちゅうだった。 今日子の性格はどちらかというと父親譲り。 プラス思考で楽天家 。 父と違う所は、三日坊主で長続きがしない所。 君枝にアイデアや閃きは良いものがあるが、長続きがしない、といつも指摘された。 そんな今日子の「自慢」は弟の優作だった。 優作が何かしたか?と、問われると‥特に何もない。 ただ弟というだけ。 兎に角、弟の優作は可愛かった。 幼い頃の優作はクリクリとした目にサラサラの髪の毛 泣き虫で 甘えん坊 いつも今日子の後について来たがった。 それでも親譲りの負けず嫌いは成長と共に顕著に現れ、合わせて努力家でもあったので、サッカーの少年団ではキャプテンも務め県大会で優勝した事もあった。 当時、小さな町ではパレードまで行われるお祭り騒ぎとなり駅前の商店街を優勝旗を手に歩くイレブンの姿が地方の新聞にも取り上げられた。 両親が共働きであった為、姉弟であそぶ時間は多かった。裏山に出かけクヌギの木を蹴ってはカブトムシをとったり、崖の上の小鳥の巣を狙う蛇に石を投げて親鳥の味方をしたり、魚の餌のミミズを空き缶に入れて近くの小川に釣りに行ったりと、二人にしか分からない面白い冒険が沢山あった。 姉弟はドリフが大好きで土曜の夜だけは九時までテレビを見る事を許されていた。 夏の夜アツアツのカレーを扇風機で冷ましながらドリフを見ては二人ともよく笑った。
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