いつかの青空

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 弟には、夜遅く両親が薬を飲ませた。  政府から人々に処方された、緩やかに死ねる毒薬だ。  人々は夜明けまでにそれを飲み、そして夜明けと同時に、政府が兵器を用いて何もかもを滅ぼしてしまう、という計画だった。  弟はすうすうと寝息を立てて眠っている。  両親は私にも薬を渡したが、すぐに飲めとは言わなかった。  「あの丘に行くんだろう?」  母が穏やかな声でそう言った。  私には近所にお気に入りの場所があり、いつか死ぬならそこで死にたいと、昔母に話したことがあった。  「うん。……私、あの丘に行ってくる」  私は両親の顔を見て、それから一度頭を下げた。  「今まで、本当にありがとう。お父さん、お母さん……さよなら」  父が私の頭を撫でてくれ、母が優しく抱きしめてくれた。  私は、自分の分の薬だけを持って家を出た。
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