弥生と続縄文

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 男性の危惧は現実の物となってしまう。水不足から、下流の村々では水田が干上がり、餓死者が出たのである。  そのため、上流であるこの村が、すべての水を奪ったからだと言われ、一方的に攻めてきたのであった。 「逃げてください、ここに居ては貴女まで巻き込まれてしまいます。貴女の村へ、山へと」 「貴方はどうするのですか、そんなことでお別れになるのなんて……」 「大丈夫です、環濠(かんごう)がありますから、守る方が有利なんです。ただ、貴女はこの村の人では無い、ここが危険であることには変わりないのです、貴女に何かがあれば、今度は貴女の村と諍いの元になってしまいますから」 「で、でも……」  女性の言葉に男性は首をふる。 「どうかご無事で、またお会いしましょう」 「わかりました、どうかご無事で」  微笑んだ男性の言葉に、そう言って頷くと、女性は村の裏から自分の村へともどっていった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加