第九話「ファッションウィーク」

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 そして「まったく、誰だよ長寿の祝いなんて考えたのは」とビールグラス片手に愚痴った。  ちなみに今夜の夕食メニューは、秋鮭のホイル焼きにさつま芋と豚肉の炒め、きのこ炊き込みご飯と秋らしい献立で、料理の内容については不満はなかった。 「出来れば欠席したいんだが、今回は爺さん直々に電話での、絶対に出席しろとの命令だからな。雹が降っても出席させられるだろうな……」 「相変わらずパーティー嫌いなんですね」  花衣が可笑しそうに笑うと、一砥はじろりと恋人を睨んだ。 「君だって他人事じゃないぞ。爺さんは君にも招待状を出したと言っていたからな。今頃桜井の家に、君宛ての郵便が届いているはずだ」 「えっ!」  驚く花衣を見て、一砥はニヤリと笑った。 「きっと会の席上で、君を俺の婚約者として発表するつもりだ。まあそれは、俺としても有り難い話だが」 「そ、そんな、困ります……」 「何が困るんだ? パーティーの時にはもうモデルも辞めている。問題など何もないだろう」 「いえ、だけど、でも……」 「花衣。君は俺を侮辱するつもりか」 「え……」  グラスをテーブルに置き、一砥は部下を叱責するような厳しい声を出した。     
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