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「君を伴侶にと選んだのは俺だ。俺にとって君は、世界一魅力的で素晴らしい女性なんだ。君が自分を卑下することは、俺の人を見る目がないと言っているのと同じだ」
「一砥さん……」
花衣も思わず箸を置き、真剣そのものの恋人を無言で見つめた。
「俺はたまたま裕福な家に生まれた。だが雨宮の爺さん自身は、瀬戸内の貧しい漁村の四男坊だった。高蝶のような歴史ある旧家とは違う。俺と君の違いは、親や祖父母が金を持っていたかいないかの違いだけだ。そこに人間としての価値や品性の差はない。むしろ俺の方が、仕事以外取り柄もなく、無趣味でだらしがなくて、君よりずっと劣っている」
「一砥さん……」
「自信を持て。君は素敵だ。舞台が爺さんの米寿祝いってのが気に入らないが、皆に俺の素晴らしいフィアンセを紹介させてくれ」
「はい。……ありがとうございます」
ようやく迷いを捨て、花衣は花がほころぶように笑った。
その愛らしい笑顔を見て、一砥も「うん」と笑顔になった。
「ああそうだ。おそらく亜利紗や紫苑も来ると思う。奏助も出席するから、亜利紗は間違いなくついて来るだろう」
「良かった……。それを聞いてホッとしました」
「うん。きっと亜利紗から一緒にドレスを選ぼうと誘いがあるだろう。都内の有名店なら俺の顔が利く。支払いは全部俺が持つから、君は自分に一番似合うドレスを選べ」
「一砥さん、でも……」
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