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一砥は座布団の横に正座したまま、「はい」と答えた。
「花衣のことを侮辱されたため、怒りを抑えられませんでした」
一砥は続けて言った。
「高蝶泰聖はこうも言いました。花衣は、亜利紗の双子の姉だと」
「何だと?」
驚く剛蔵に、一砥は泰聖から電話があったところまで遡り、事実のみを詳細に報告した。
剛蔵は黙って話を聞いて、一砥の話が終わった後も、両腕を組んで一言も言葉を発しなかった。
それを怒りゆえの反応と見て、一砥は冷静に伝えた。
「……事情はどうあれ、大株主を立腹させたことは私の失態です。社長の任を解くなり勘当するなり、納得のいく処分をお決め下さい」
「……その必要はない」
剛蔵も冷静だった。
「高蝶泰聖の胸ぐらを掴んで凄んだそうだが、もしまた同じ状況になったら、次は我慢するのか?」
「しません」
一砥は即答した。
「私にも許せることと許せないことがあります。花衣への侮辱は、許せないことでした。ですからまた同じことがあれば、私はまた同じ対応をします。あるいは一発くらい殴るやもしれません」
「祖父が成り上がりと侮辱されたことについては、許せることなのか」
「事実、成り上がりでしょう?」
途端に剛蔵はプッと噴き、「違いない」と大口を開けて笑った。
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