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思う存分笑ったあとで、剛蔵はふぅと肩で息をつき、言った。
「繰り返すが、儂はお前を罰するつもりはない。むしろよくやったと褒めてやる。儂もその場におって現場を見たかったくらいじゃ」
「本気で言ってますか」
「儂はいつも本気じゃ」
孫と同じ台詞を口にし、剛蔵は腕を組んだまま、遠い目つきになって言った。
「というか、あの男はもう、うちの大株主ではない」
「え?」
「大分前に投資に失敗し、大きな借金を抱えたらしくてな。金策に必死なようで、うちの株に関しても年々保有率が下がっておる。今、あやつのうちの株保有率順位は、当初の五位から二十位圏外にまで落ちておる。そのくらいちゃんと調べておけ」
「……申し訳ありません。不勉強でした」
月光堂の筆頭株主はむろん会長の剛蔵だが、会社を立ち上げた際に多額の融資を申し出てくれた高蝶泰聖も、過去には八パーセントの株を保有し、役員以外では一番の発言権を有していた。
後になって一砥が調べたところ、剛蔵の言葉通り、今の高蝶泰聖の月光堂グループ株式保有率は、0.2パーセントにまで下がっていた。
「どうやら税逃れもしておったらしくな、近々国税の調査も入る予定じゃ」
「確かですか?」
「確かだ。千武の報告は間違った試しがない」
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