第九話「ファッションウィーク」

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「あの連中が調べているんですか?」  驚く一砥に、剛蔵はフフンと威張った顔をした。 「お前らの便利屋をやらせるために、わざわざあんな部署を作るわけがなかろう。いわば儂個人のために働く、CIAやMI5みたいなものじゃ」 「……随分大きく出ましたね。まあ確かに、あの連中は有能そうです」 「そうだ。その連中が、高蝶家はもう終わりだという報告をしてきた。あの高蝶泰聖と言う男は、学生時代からその器もないくせに有能ぶるのが好きでな。あちこちの儲け話に手を出しては、先祖が築いだ財産をドブに捨てるような愚行を繰り返しておった。挙句の果てには違法な税金逃れ。……きっと歴代の高蝶家当主達は、馬鹿な子孫のせいでお家が潰れることを、草葉の陰で嘆いておるよ」 「そうですか……」  そこで一砥は、亜利紗のことを思い出した。 「もし祖父が脱税で起訴されるとしたら、孫の亜利紗や娘夫婦はどうなるんでしょう」 「まあ影響は免れんだろうな。脱税額がどの程度なのかまでは分からんが、億単位であることは間違いない。父親の私有財産で払いきれない額ならば、娘夫婦に頼らざるを得ないだろう」 「あの家は確か、婿の一慶(かずよし)が大学教授で、泰聖の娘の華枝(はなえ)は専業主婦でしたね」     
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