第一章

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「俺はバルデックと数名の部下を連れて王都へ帰還する。バルデック、臨時の小隊を組むに当たって小隊長を任せる。メンバーは俺が見繕うから、自己紹介が終わり次第、出発の準備を命令しろ」 「は、はい!」  いきなりの抜擢にバルデックも立ち上がって背筋を伸ばした。 「と、いう訳だ。何人か引き抜いていくぞ、副長?」  第一中隊の中隊長を兼ねる副長は団長の決定に逆らえる訳もなく、困った顔をしつつも『できるだけお手柔らかに』とだけ答えて小さな笑みを見せる。 「昼前には出発する」  デルは2人を連れて家を出た。日はまだ登り始めたばかりで、空気の冷たさがまだ周囲を漂っている。それだけに体の中の空気を入れ替えるには実に心地よい。デルは大きく深呼吸をすると、肺の中の空気を全て入れ替えた。  本来ならば今日の予定は、蛮族の集落で亡くなった村人の葬儀に参加するはずだったが、デルはやむを得ないとカッセルに代理を命じる。 「いい天気だ」デルは朝日に顔を向けて目を細めた。 「部下の話では、今日一日はこの天気が続くとのことです」と、副長。  デルは彼の言葉を聞きながら空をふと見上げると、青空の中に見える白い雲に少しずつ動く黒い影が見えた。目を細めるとその影は人のようでもあり、鳥のようでもある。 「バードマンですね。自分は初めて見ましたよ」  隣のバルデックが、デルと同じように空を見上げて声を上げた。  バードマンは鷲のような翼が生えた男性型の亜人で、普段は人里離れた山や深い森の中にいる。人間との交流はなく広義では蛮族ともいえるが、小型で緑色のゴブリンと比べれば、まだ人間に近く好印象に語られることが多い。  バードマンらしき空の影は、そのまま一直線に西から東へと進み、やがて太陽の日差しに隠れて見えなくなった。 「副長、連れていく人選だが………」  デルは予め考えてあった4人の騎士の名前を副長に伝えて、呼び出すように指示を出した。
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