第九章

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「妹に………残った部隊をまとめて本隊に合流しなさいと」 「分かった」  それに、と彼女は最後の力を振り絞る。 「もう少し冷静になりなさいと伝えてちょうだい。姉からの………最後の言葉として」 「それも伝えよう」  デルが頷くと、アイムは目を瞑ったまま、その表情が変わることはなかった。  デルは立ち上がって彼女に黙祷を捧げると、バルデック達が喜びの声を上げながらデルと合流してきた。 「団長! ご無事で!」「………ああ」  バルデック達の喜びとは逆にデルの声は重たかった。 「へっ! 蛮族ごときが俺達、人間に勝てるかよ!」 「全くだ! このまま本隊に向かった奴らも皆殺しだ!」  他の騎士達も次々とデルに合流し、互いに肩を組みながら無謀とも思えた作戦の勝利と奇跡的な生還に興奮が冷めきれない。 「止めないか!」  その雰囲気の中で声を荒げたのは他でもない、団長のデルだった。炎をも揺らすほどの怒声に周囲の凱旋気分は一気に消え去り、彼らの動きが止まる。  デルは生き残った騎士達の顔を1つ1つ見てから頷き、静かに声を出した。 「もはや彼らは蛮族ではない。恐ろしい力を持った魔王軍だ。そしてこの司令官は俺と正々堂々と戦い、そして死んでいった。彼女を蛮族だと蔑む奴は許さんぞ!」  デルの言葉に今まで叫んでいた騎士達が、バツが悪そうに目を逸らし口を紡ぐ。 「全員、気をつけ!」バルデックが声を上げた。  彼の声に今まで下を向いていた騎士達が一斉に直立する。 「我らが団長と正々堂々と戦った敵司令官に対して、敬礼!」  騎士達が一斉に胸に拳を当て、目を瞑ったまま静かな時が流れる。 「………ありがとう、バルデック」  デルが感謝すると、バルデックは小さく頷き、全員に黙祷を解かせた。      それとほぼ同時に、北門から馬が走る音が聞こえてきた。  その正体は分かっている。デルはやや騒がしくなった騎士達に小さく手を上げて声をかける。 「全員、武器を構えるな。そのまま直立の姿勢で整列しておけ」  デルはアイムの遺体を抱きかかえると、彼女の武器を3人の騎士に持たせてゆっくりと、そして整然と歩き始めた。
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