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「………何故だ」
オセはデルに背中を見せながら足を止める。
「何故蛮族であるお前達が、そこまでする?」僅かに横顔を見せた。
デルはオセの言葉に、毅然として答える。
「………お前達が、俺達の考えてきた蛮族ではないと思い始めたからだ。少なくとも魔王軍という恐ろしい敵が現れた。そして彼女は俺と正々堂々と戦った。お前達に伝わるかどうかは分からないが………俺はそういう相手には敬意を払うべきだと思っている」
デルの中で、今まで戦ってきた者達の見方が変わってきていた。今まで蛮族だからという理由で何百体と斬ってきたが、中には人と同じ言葉を話し、戦術をもって戦いに挑み、敬意を払うべき相手がいたことに気付く。
オセはデルの言葉にしばらく黙ると、言葉を選ぶように口を開いた。
「お前の名前、デルとか言ったか」「ああ」
デルは短く肯定する。
「私も貴様と同様、蛮族の中には敬意を払う相手がいることを覚えておく」
オセは振り返ると鋭い目でデルを睨みつけた。だが、その眼は怒りに満ちつつも感情が制御された眼でもあった。
「だが、貴様が2人の仇であることは変わらない。次に会う時は、必ず貴様を殺す、覚えておけ!」
「分かった。俺もお前のことを忘れずに覚えておこう」
オセは一緒に戻って来たオークの力を借りながらアイムと彼女の武器を荷馬車に乗せると、残った蛮族と共にゲンテの街を出ていった。
デルはオセ達の姿が見えなくなるまで大通りを見つめ続け、最後に大きく息を吐く。
本当にこれで良かったのだろうか。デルの心の中で、何度も同じ言葉が巡る。
デルは自分なりの結論を出しながらも、それを部下達にも強制させているのではないかという不安に挟まれていた。
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