61人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
「これは生き残った騎士達全員の総意です」
既に眠っている騎士達もこのことは全員が知っていると、バルデックが言葉を強める。
「………そうか、どうやら一本取られた様だな」
デルは彼らの行動を咎めることなく、両手を小さく上げて降参する。
「まったく、うちの騎士団には馬鹿が大勢いたのか」
「ええ、その馬鹿な騎士達の団長なので、きちんと責任は取ってください」
バルデックが笑うと、他の騎士達も一緒になって肩を震わせ始めた。
「バルデック、お前も言うようになったな」
「ありがとうございます」
デルはバルデックと硬い握手を交わす。
「………他の騎士や、フェルラント達を頼む」
デルの言葉にバルデックが僅かに驚く。
逆にしてやったとデルの口元が緩む。
「何年一緒にやってきたと思ってるバルデック。お前はここに残るんだろう?」
騎士とデルの分の馬を合わせると1頭少ない。デルは始めからバルデックが残ることに気付いていた。
バルデックはお見通しでしたかと目を静かに閉じ、小さく笑みを返す。
「私の小隊で唯一生き残った部下をよろしくお願いします」
「当たり前だ。俺の部下でもある」
2人の手が離れる。
デルは一度だけバルデックの目を見ると、すぐに踵を返しで用意された馬にまたがった。
「行くぞ、お前達! 銀龍騎士団、出発する!」
朝日を背に、デルの声が青い空を突き抜けていく。
―――間に合って欲しい。全ては我々にかかっている。
目指すは大都市ブレイダス。
最初のコメントを投稿しよう!