-紅-

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―――この時代に呼ばれ、この時代に翻弄された1人の人間に最大の感謝と謝    罪、そして永遠の愛を込めてこの本を記す。    願わくば二度とこのような時代が起きないことを切に祈り、この本を遺    す。    未来の我が子らよ。そしてこの大陸の全ての者らよ。この世は多くの生    命の犠牲の上に成り立っていることを、ゆめゆめ忘れることなかれ。    フォースィは静かに本を閉じ、本棚のあるべき場所に納める。 「これで王城に存在する12巻は行方不明となる訳ね」  本のことを、そもそも本の内容のことをどこまで彼は知っているのか。フォースィは依頼してきたギュードの表情を思い出しながら、納められた12巻の背表紙を指でなぞった。 「きっと信じてはくれないわよ、こんな話」  フォースィにはこの本の中を全て知っている。そして、今ではその多くが古い絵やタペストリー、言い伝えで断片的に残っている物語になっていることを知っている。 「リリア女王陛下………申し訳ありません。今その歴史が繰り返されようとしています」  フォースィは小さく呟くと、書庫を後にする。 「魔王軍………本当に魔王が復活したのなら、この国を本気で攻めるはずがないわ。母が言っていたことを信じるならば、魔王はこの国を愛していたのだから」  魔王軍と魔王、そして王国の内部で何が起きているのか。フォースィは少ない情報を頼りに自分のすべきことを考えながら階段を上がっていった。                         ー第三部に続くー
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