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「どうした、シュベット。さぼりか?」
「小隊長には言うなよ………って、ででデル団長でしたか! ももも申し訳ありません!」
声のする方をだるそうに振り向いたシュベットがデルの顔を見るなり、全身の関節を固まらせて敬礼をする。
デルは、そんなに驚くなと笑いながら腰に手を置き、何をしていたのかと彼に尋ねた。
「は。少し、考え事を」「考え事?」
シュベットは貴族に似合わず、照れくさそうに首周りを手で擦ると自分が小隊の副隊長として、十分に果たせているのかと小声で漏らした。
「団長が選抜して頂いた3人は、全員に小隊長の経験がありますが、私にはそれがありません。それに彼らの動きは先が分かっているかのように的確過ぎて、小隊の副長なのに自分が指示を出す必要がないのです」
自分は不要なのではないかという不安が日に日に大きくなっているのだとシュベットは最後までデルに話した。
「なるべくバルデック隊長の言葉を漏らさないようにと、真剣に聞いてはいるのですが、彼らの方が呑み込みが早くて………」
「お前………貴族だよな?」
貴族出身にしては何と情けない姿勢かと、デルは首を横にしながら口を開ける。
「いや、人間としてはごく自然な悩みなのだが、貴族はもっと見栄を切るように意味もなく胸を張るもので………いや、何を言っているんだ俺は」
デルの頭が混乱してきた。
つまり、バルデックが常に不満そうな顔をしていると感じていたシュベットの表情の意味は、彼の見当違いだったということが分かった。
「確かに自分は貴族ですが、カッセル副長のように貴族の時と騎士団の中にいる時で使い分けられるようになりたいと思っています」
「ああ、それは良いことだ。うん」
デルは何度も瞬きしながら何度も頷いて見せる。
今まで貴族が中心の小隊にいたために、デルは彼の本性を把握しきれていなかった。彼は貴族のくせに、貴族らしくなく、とても不器用な男だったのである。
「つまり、部下の3人よりも動けないことが、副長としての自信に繋がらないということだな」
デルの要約にシュベットはその通りですと、眉をひそめて項垂れた。
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