第五章

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「メイジ級だ! それも1匹ではありません!」騎士の一人が叫んだ。  ゴブリンの首領級には下級魔法を扱う者がいることはデルも知っている。だが、それは1年に1度会うかどうかの頻度で、今デル達の目の前のように左右の茂みに何匹もいることは王国騎士団に入って以来聞いたことがない。 「これが、蛮族の戦い方なのか」  ありえない。こんな事はありえない。  デルの頭の中が、まるで初めて実戦を迎えた騎士見習いのように判断がまとまらず、ただただ蛮族達の攻撃に対応するだけに留まっていた。 ―――蛮族だと思って戦おうとすると痛い目に合う。 「これが、お前の言っていた事か! フォースィー!」 ―――自分よりも賢い敵だと思うべき。 「団長! 指示を!」  フェルラントがデルの肩を揺すった。  我に返ったデルは、すぐさま今まで培ってきた全ての経験を捨て去り、相手をゴブリンだと思わない考え方に切り替える。 「全軍! 全速力でここを突破する!」 「団長!? まさかゴブリンから逃げるんですか!」  騎士の言葉に、デルは『そうだ』と怒鳴り散らすと、多くの騎士が口を閉じた。 「頭を切り替えろ! 奇襲と挟撃、普通に考えればこちらが不利だ! 相手をゴブリンだと思うな、同じ人間の戦い方だと考えろ!」  そう考えると、ここで敵が仕掛けてきた意味が自然とデルには見えてくる。 「これは前線に我々を合流させまいとする一種の遅滞戦術だ! このまま戦えば戦う程前線が不利になる!」  ならば敵の策に乗らずに、突破して味方と合流すべきだとデルは騎士達に発破をかける。 「フェルラント! 俺は騎馬隊と共に前線へと駆け抜ける。お前は馬を失った騎士達で殿を執れ! 今度は逆にこちらが奴らを合流させないよう仕掛けてやるんだ!」 「了解しました! 団長、ご武運を!」  フェルラントは馬を失った騎士達をまとめあげるとデル達の後方に陣取り、盾を構えながらゴブリン達の注意を集める。その間にデルは生き残った騎馬と共に丘を駆け下り、挟撃されている範囲を駆け抜ける。 「邪魔だぁ!」  草むらから飛び出してくるゴブリン達を先頭のデルが切り払い、道を作る。フェルラント達とは次第に距離が離れていくが、下り坂と加速する馬の速さにゴブリン達はついて行けず、デル達はすぐに挟撃されていた範囲を突破する。
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