第六章

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「貴様らぁぁぁあ!」  瞬間、デルは誰よりも早くゴブリンの群れに飛び込み、風と共にすり抜ける。そしてデルが再び走り出すと家から出て来たゴブリン達は首や腰から上が地面に崩れ落ちた。  それをきっかけに、家屋の中から、家と家の間から、2階の窓から一体どこに隠れていたのかと蛮族達が次々と現れ始めた。種族もゴブリン、オーク、さらにはオオカミに乗ったゴブリンまで現れている。 ―――その数およそ50匹を超える。 「団長、ここは私の小隊で押さえます!」  古参の小隊長の1人が足を止め、自分の部下に声をかけて人間の壁を作った。 「私も残ります! 小隊、迎撃準備!」  古参としては珍しい女性騎士率いる小隊も残り、合計10名がデルの後方を固めた。 「「団長! ご武運を!」」 「頼む!」  デルは残った3小隊を率いて集会所へと向かう。  もはやこれは辺境の蛮族退治ではない。デルも含め、傍を走る騎士達は皆同じことを感じ取っていた。  仲間を殿に走ることたったの数分。デル達が集会所に辿り着くと同時に、金属音がピタリと止んだ。 「カッセル!」  デルが集会所前で剣を正面に構える騎士の背中を見て、その名を叫んだ。 「………団長、申し訳………ありません」  直後、銀龍騎士団副長のカッセルは鎧の隙間から大量の鮮血を噴き出しながらその場に膝をついて崩れ落ちた。  デルは彼のもとへと走り、前のめりに倒れようとしたカッセルの体を支えると、今にも命が付きそうな彼の名を2度叫ぶ。  だがカッセルはそのままデルの肩に体を預け、半開きになった目はそれ以上閉じることも開くこともなかった。  カッセルほどの腕前の騎士に一体何が起こったのか、デルは炎上する集会所の目の前に立つ亜人を睨みつけた。
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