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第二章
ウィンフォス王国は元々大陸の北西側を占めていた中規模の国家であったが、二百年前の戦争で東の平原を抱えていたカデリア王国を滅ぼした結果、東西に延びた大陸一の大国となった。
併呑当時のカデリア王国の領土は戦争の爪痕で散々な状態だったが、二百年も経てばその名残を探す方が難しく、今では大国の胃袋を支える食糧庫として重要な地となっている。
デルとバルデックが率いる臨時小隊は馬を走らせ、一番近いゲンテの街から旧カデリア王国の王都だった大都市ブレイダスを経由し、街に入る度に騎士団の詰所で馬を変えながら王都を目指した。
行きは三百名を超す騎士団の行軍だったため、片道だけでも約9日の行程だったが、帰りは6日とかからず王都ウィンフォスの東門へとデル達は到着する。
王都を守る巨大な東門に立つ衛兵にデル達は所属を名乗ると、手続きを待つ旅人や商人達の横を抜けて最優先で門をくぐる。そして、東西を結ぶ大通りから南北の大通りへと向きを変え、中央区の王城の傍にある騎士団本部へと辿り着く。
「デル団長、おかえりなさい」
「ああ。早速で悪いが皆の馬も頼む」
デルが馬から降りると、騎士団長の到着に気付いた厩舎当番の騎士候補生達が足早に近づき、デルから手綱を預かった。
道中しっかりと宿で体を休めてきたが、1日10時間以上の馬での移動はかなりの体力と集中力を消耗した。さすがのバルデックや選抜した臨時小隊の騎士達も、馬から降りると眉をひそめ、その疲労の表情が見て取れる。
デルはバルデック達の肩を1つずつ叩いて回り、声をかけた。
「かなりの強行軍だったが、皆よく耐えきった。バルデックも初の小隊長任務ご苦労だったな」
「はい、ありがとうございます」
顎に集まった汗を手の甲で拭いながら、初めて小隊長を任されたバルデックが残った力で声を出し切る。デルは彼に部下の休息を取らせつつの本部待機を命じると、そのまま騎士団本部にある騎士総長の執務室を目指した。
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