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終章
デルの予想通り、森へ向かっていた蛮族の長はバステト4姉妹のオセだった。
陽動だと気付いて街へと戻って来たオセは、大通りの真ん中でデルが抱き抱えているものの正体に気付くと、部隊を停止させて馬から降り、自分だけがこちらに向かってくる。
「………アイム姉さん?」
デルは無言のまま、左右に体を揺らしながら近づいてくるオセを待った。そして目の前に来たところで、ゆっくりと両手を前に出し、アイムの遺体を引き渡す。
オセはデルから受け取ったアイムを静かに石畳の上に置くと、彼女の顔を抱きしめながら肩を震わせる。
そしてデルを見上げるように涙をためた瞳で睨みつけると、そのままデルの胸倉を掴んで押し倒した。
「団長っ!」「お前達は動くな!」
白銀の斧を持っていた騎士が思わず叫んだが、地面に倒されてもデルは慌てることなく、部下の動きを静止させる。
「お前か! またお前が殺したのか!?」
姉妹を2人も殺され、オセは今にもデルの喉を食い千切らんばかりの形相で、顔を近づける。デルは押し倒された衝撃で一瞬息が詰まったが、それでも何もせずにオセを見つめ続けた。
彼女の体をよく見ると、メイド服の下には包帯が何重にも巻かれているのが見えた。恐らく先の戦いでの傷が癒えていないのだろう。デルはオセの前でゆっくりと瞬きをすると、静かに口を開けた。
「ああ。俺が殺した」
「貴様ぁ! 殺してやる!」
オセの右拳が夜空に向かう。さすがに騎士達もデルを助けようと体を動かしたが、デルはそれすらも動くなと静止させた。
「………彼女からお前に遺言を預かっている」
オセの動きが止まる。
デルはオセに残った部隊をまとめて本隊と合流すること、そして姉としての最後の言葉を彼女に伝えた。
「………姉さん」
ついにオセの目から涙があふれ出す。彼女の涙はデルの胸当てに雫となって落ち、曲線の鎧をなぞって石畳に流れていく。
オセは石畳の上に寝かされているアイムの姿を見ると、鼻をすすりながらデルから離れた。そしてアイムを抱きかかえて立ち上がり、そのままの足で彼女が使っていた白銀の斧を騎士から受け取る。
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