第四章

1/14
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/139

第四章

 副長達が待っているカデリア自治領の東部の集落までの道のりは、およそ9日の行程となる。  デルの命令で早馬は昨日の内に出発しており、その後は先の街へと順々に早馬が出されることになっていた。到着した騎士団がすぐに馬の交換と補給物資ができるよう、各街で事前に準備されていく流れが構築される計画である。  これが他の騎士団の場合なら王都出発の準備に丸2日、道中の行軍には12日を要するだろう。  その行軍行程の2日目、デル達銀龍騎士団はウィンフォス領とカデリア自治領との間にある巨大な城壁に辿り着く。  シモノフの大関所跡。  かつて2つの王国の領土の境界線を作っていた南北に走る城壁である。あまりの長さに、天気が良い日でも南北の終わりを見ることはできない。  カデリア王国が滅亡してからは、大関所は常に開かれた状態となっており、また修復する必要もないために城壁には当時の戦争の名残と風化による城壁の劣化が混ざり合っていた。さすがに人通りがある部分は整備されているが、南北に行くにしたがって放置され崩れた部分が目立ってくる。  昔は混雑のために城壁を挟んで宿場町が栄えていたが、今は城壁が街の中心となっており東西両方の商品を買うことができる珍しい街となっていた。  2日目の宿泊場所はここである。デルの指示の下、野営や補給の準備が進められる。  どんな大都市とはいえ、七百人の騎士全員を宿泊させる余裕はない。あったとしても旅人や商人達の宿を全て奪う訳にもいかない。そのため銀龍騎士団は全体の3分の1を民間の宿泊施設で、さらに3分の1を街の郊外での野営組、残りの3分の1を街にある騎士団の詰所で雑魚寝のような形で一晩を過ごすことにしている。  これを交代制にして回すことで騎士団の経費節約と騎士達への公平性、そして住民達への配慮を行っていた。  今回バルデックの小隊は野営組。彼は小隊の部下に野営の準備を指示すると、自分は小隊長の集まりがあると言ってその場を離れて行った。  デルは浮いた時間で野営の準備をしている中を見て回り、騎士達に声をかけて回る。  そして数分ほど歩いていたデルの視界に他の騎士よりも頭1つ分大きい男、バルデックの小隊で副長を務めているシュベットの姿が入った。彼は何か作業をするわけでもなく、単に立ったまま空を見上げたり、そのまま首を下に向けて地面を見たりしていた。
/139

最初のコメントを投稿しよう!