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もうそんなことを考えるはずない。でも、彼があまりにも真剣なので私は「はい」と答えた。
すると、彼は相好を崩して私を強く抱きしめた。
それからの2年間は、私にとって一番幸せな時間だった。
大好きな彼と同棲できたのだから。
そして、ある日、彼はあらたまって私に話があると言った。
プロポーズだった。
シンプルな結婚指輪を渡され、結婚式はできないけど、と彼は照れくさそうに笑った。
「たぶん俺のほうが先に逝くと思うけど、命ある限り、君を幸せにするから。」
「そんなこと、わからないじゃない。約束ですよ!先に死んだら許さないから!」
「君は無茶を言うね。」
彼は、苦笑いした。
その二年後、彼は癌を患って死んだ。
私は、一生分の涙を使い果たすほど泣いた。
彼が死んで七日後、私の元に、一通のメールが届いた。
それは、彼からだった。
恐らく死ぬ前に書いて、しばらく経ってから送信されるように予約していたのだろう。
「このメールを読むころには、俺はたぶん死んでいると思う。君は、さよならを嫌うから、今、本当のさよならを言うために、この文章を書いている。
きっと君は、出会ったときに、何故俺が死のうとしていたのかが、ずっと気になっていたのではないかと思うので、正直に話します。
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