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結果、彼の心は完全に私から離れて、非道な行動を両親からとがめられ、居場所がなくなってしまったのだ。自己嫌悪に押しつぶされ、死のうと思った。
それなのに、このおっさんと出会ってしまったばかりに。
「じゃあね、元気で。」
男は、そう言って立ち去ろうとした。何が、元気で、よ。元気になんてなれるはずないじゃん。邪魔者がいなくなって清々した。もうあの場所はダメだから、違う場所で死のう。
私が無言で立ち去ろうとすると、腕を掴まれた。
「何?」
私は、めいっぱいその男を睨みつけた。
「まだ、死ぬ気でしょ?」
男は私の手を離さない。
「あなたに関係ないでしょ?」
「あのさ、死ぬ前に、美味いラーメンでも食べない?俺、良いところ知ってるんだ。」
私、なんでこんなところにいるんだろう。しかも、こんな年の離れたおじさんと。
「へい、お待ち!」
湯気の上がるラーメンが目の前に置かれた。不覚にもお腹が鳴った。
聞こえたのか、男が笑った。
「ここの、スープが絶品なんだ。さあ、奢るから、お食べ。」
死ぬためにあの場所に行ったのに、今、体が生きることを求めて目の前のラーメンを欲している。なんだか、バカバカしくなってきた。もしかして、これが狙いなの?
私は、あっと言う間にラーメンを平らげた。その様子を、男は嬉しそうに眺めていた。
「死ぬんじゃねえぞ。」
私は、そう言われ、思わず言い返した。
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