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「こんなのはダメ元。当たって砕けろだよ。」
この根性が恋愛にも生かされればいいのだが、本人は全く色気なし。
表紙には、彼女のペンネーム「よもつひらさか」の文字が綴られている。
「ねえ、なんで『よもつひらさか』なの?なんだか男みたいじゃない。もっと女性っぽいペンネームにすればよかったのに。
「『よもつひらさか』は、イマムラ大先生の傑作短編集だよ!知らないの?私、この本が大好きで、絶対にペンネームはこれにしようって思ってたんだから。」
それから、イマムラ先生とやらが、どんなに偉大かを延々と聞かされた。
そして、私は渋々、彼女に着いて行き、出版社へと向かった。
運命とは、こういうことを言うのだろうか。その出版社で私たちを迎えてくれたのは、誰あろう、彼、北村信二であった。
「驚いた。こんなことってあるんだね。」
彼は、戸惑ったような曖昧な笑顔で私に対峙した。
どうして彼は、私をそんな目で見るのだろう。もしかして、迷惑なのだろうか?
彼は由香里から原稿を受け取ると、結果は追って知らせますと彼女に名刺を渡した。
私には名刺をくれなかったが、私は彼女に頼んで彼の携帯電話をメモさせてもらった。
「それにしても、運命って本当にあるのかもねえ。」
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