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血まみれの聖女に白いドレスを
箱を担いだ男について街から大分外れた古城跡にたどり着いた。
月が細く足元が悪いのに、男は転びもしなかった。
逆に暗がりで気がついたが、男は幽かに発光しているようだった。
コツンコツンと箱が鳴った。
男は舌打ちをして箱を開けた。
箱には黒いワンピースを着た。幼いが美しい少女がいた。
箱を開けると自分は男に引きずられ石壁の残る影に隠れた。
妖魔の鳴き声と口汚い人語。影からは分からないが、小さな少女は一人妖魔を滅しているようだった。
しばらくして静かになって自分は男について少女の元へ行った。
二本のナイフをしまって。少女は「パパ」と男に駆け寄った。
今だ血生臭い場所で少女は何処までも清らかだった。
「疲れたろう?横になるといい」
男が厚くまとめたマントを枕に少女は寝息をたて始めた。
「ーー少し昔話をしよう。」
男は娘の誕生を。受けた呪いのような言葉を、娘が成長し力が強まり村人が狂ってしまった話を。
清らかすぎる彼女は普通には生きられない体になった。藁にもすがる思いで、普通の人間である母親と娘の心臓を入れ換える事もしたが妻は死んだ。そして自分が娘と心臓を入れ換えたら。なんとか生き延び、それでも普通と程遠いが、妖魔を滅し暮らしている。
「酷い父親だろう、清らかすぎる。ただそれだけで人として暮らしていけない。あいつら妖魔の存在があって娘は娘でいられる」
「なぁ、頼む。お前の大事にしたいものに触れないだから、あの子に白いドレスを作ってくれないか?」
箱に詰められて運ばれる少女の服が、白では喪服のようではないかと思ったが口にしなかった。
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