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えらく月並みな表現で、えらく唐突だけれど……僕は恋に落ちたかも知れません。 中学三年、受験が迫っているっていうのは分かっています。でも、仕方ない。この感情を抑えることが出来ないのです。 恋したのは隣の席の小倉さん。綺麗な髪に可愛らしい童顔。 これから僕の青春が花開いてゆく。誰にも邪魔されない僕だけの想い。 朝起きてそうそうそんなことを考える。そして独り笑む。僕が抱いている感情に向かって二カリと笑む。 今日から月曜日。やっと会える。昨夜から今日を楽しみにしていた。……会いたいな…… 朝からそのことしか考えていないって受験生としてどうかと思うけれど仕方ない。それが片想いっていうものだから。 目をこすり、ベッドから起き上がると勢いよくカーテンを開けた。太陽が眩しい。今日もいい日になりそうだと内心思った。気分も最高潮。 ダイニングルームに向かい、家族に元気に 「おはよう」 ほら、いい日になりそう。 棚から食パンを取り出しオーブントースターに置き、蓋をしタイマーをかける。オーブントースターの中がどんどん赤く染まってゆき、パンがゆっくりとこんがりと焼けてゆく。「チンッ」という音とともにいい匂いが鼻を刺激する。蓋を開け皿にのせてマーガリンを塗りたくる。 食パンを口に運ぶとミミがいい音を立てた。マーガリンの風味が広がる。 僕はパンを食べ終え、自室へと戻った。 もう少しで会える。あの子に会える。それを思うとたまらなくなった。1分、1秒、ひと刹那……とにかくはやく学校に着きたい。僕、青春してる…… とにかく制服に着替えた。まだ出発するような時間でもないのに、早足で玄関に向かい、急ぎ足てドアの向こうへ駆け出した。一刻も早くあの子に会うために――
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