あいつはご遠慮願いたい

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 地球がおかしくなっているのだと知った時、クラスの皆で話しあったことがある。とはいってもしおんはいつものように不在だった。  それは地球の自転の速度がまだ本来の半分程度はあった頃で、カレンダーでいえば一か月半程度前のことだ。  夏本番はまだしばらく先だというのに最高気温は三十度を超えていた。昼間が二倍に伸びだから寒暖の差が激しい。その異常な宇宙規模の自然現象にあかねの在籍するセントジョーンズ高等学校の生徒だけではなく世界中が騒然としていたが、事態はそこまで深刻だとあかねは思っていなかった。  そんな時、担任の山川先生は厳しい表情で皆に告げた。無精ひげを蓄えた、三十路すぎのちょっとイケてない先生。ちなみに独身、彼女ナシらしい。 「皆さん、これからは家族や恋人など自分が一緒に過ごしたい人との時間を大切にするように。この意味がわかりますね?」  そこでクラスの生徒達は思った。かなり前向きにとらえて。 ――校則が解禁になったんだ。  生徒達は皆、とある残念すぎる校則の束縛から、不意に解き放たれたのだ。その校則の重要な一項目は。 『在学中ノ生徒ハ男女交際ヲ禁ズ』  皆の脳内はレンジでチンしたように温度が急上昇した。ことにあかねは沸騰していた。  ああっ、恋人を作らなくちゃ。一緒に過ごしたい人を作れなかったらあたしの青春が腐ってしまうっ!  あかねもまた、世界が終わる恐怖よりも恋愛妄想が先行していたひとりだった。  この事態がきわめて重大なものなのだと気づくまでは。
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