あいつはご遠慮願いたい

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「用があってきみの自宅を訪ねたら、出かけたっていうものだから足跡を追ってきたんだ。するとここまで続いていて、吹雪いてきたからまずいと思って。とにかく、きみは今、ここで死ぬわけにはいかないんだ」  ああっ、それはラッキーっていうべきなのかな? でも、寒さでもうろうとしていて、幻覚なのかもしれないって思う。 「だって、世界が滅びても、きみはけっして死なないのだから」  へへへ、この人何言ってるの? なんだかアレね、中二病? 死なないわけないじゃん。それともあたしが寒さのせいで頭、おかしくなったの……?  徐々に意識が遠のいてゆく。  そのときふわりと体が軽くなった。背中と膝裏に支えられる感触がある。  あ、あれ……? お姫様だっこ?  薄れゆく意識の中であかねは思う。 どう見たって華奢なしおんくんに、あたしを軽々と持ち上げる力なんてなさそうなのに。  ということはつまり、これはあたしの妄想なんだ……。 逝っちゃうときって幸福な瞬間が訪れるっていうけれど、今がきっとそうなんだ。 素敵な王子様に出会いたい願望がしおんくんの無駄なイケメン顔を思い出させて、お姫様抱っこされている気分になっちゃっているんだ。  きっとこのイマジネーションは、神様の最後のお情けなのね……。
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