導く声

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 感染者は映画やゲームみたいに、こちらを見つけて追いかけてくることはなかった。  当然理性を失い、手当たり次第他人を襲うようになり、奇妙な致死性のウイルスか何かをばらまくのだけど、大抵はうずくまって譫言を呟いているだけだった。  そんなわけで気を引かない限り、それほど危険ではないというのが私の経験から来る感想だった。  人々はその凶暴性と見た目にパニックになり、被害が拡大したのだ。  もしかしたら、他にも生存している人がいるのかも知れないが、少なくても私の知る限りに置いて、トランシーバーの向こうの彼以外にはいなかった。  銃砲店に到着した。  トランシーバーの彼の助言に従いショットガンとその弾を入手した。  彼は何でも知っている。  何故かショットガンの使い方も教えてくれた。  何故知っているのか聞くと、彼の祖父が猟友会に所属していたらしい。  彼はショットガンはあまり使わないようにアドバイスしてくれた。  音が、感染者をおびき寄せるからだ。  私は撃ったこともないし、撃てるとも思わなかったので背中のリュックにしまい込んだ。  暗くなってきたので、私は小さなアパートの空き部屋を見つけ、そこで一晩を過ごすことになった。 「お腹は空いていないですか?」  私は彼に問いかける。     
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