プロローグ

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「あぁ、小泉の見舞いなーちょい待ち」 放課後の職員室で顧問が机をゴソゴソと漁っている。おおかた生徒の個人情報ファイルでも探しているんだろうが、これだけ汚ければそりゃあ簡単には出てこないだろう。というかそんな雑な管理でいいのだろうか。 小泉さんと私は美術部に所属している。といってもあまり話をしたことはない。まだ高校1年の6月ということもあるけど、そもそも小泉さんは部室にあまり顔を出さないのだ。 だいたい週に2日、3日くらいだろうか。でも6月になった途端ぱったり部室に来なくなった。聞くと体調不良で入院したという。 もともと部員数が少ないこともあって、小泉さんが部を辞めるのではないかと先輩は心配した。退部だけは避けたい先輩はお見舞いに行くことを決めたそうだ。 だが、先輩の心配性はここでも発揮された。先輩は上級生が行っても萎縮してしまうだけではないかと悩んだらしい。そこで同学年の私に白羽の矢がたったのである。 何故その気遣いを私にもしてくれないのか。
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