雷雲

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夕立ちが長引いているのか、又は遅れているのか夜の空を更に黒くさせている分厚い雲から雨粒を落としている。 時には小さく、時には大きく、強弱をつけていて先が読めない。 ヘッドホンから奏でる音みたいに。 車の後部座席から意味もなく外を眺める。 走らせる度に風景が変わる。 見飽きている。この風景を。 遠くの遠くの空は黒い。 よく見たらその中で無造作に光が走っていた。 なんか、見覚えがある感覚だ。 心地の良い音楽に耳を傾け、瞼を閉じる。 この曲のジャンルが分からない。 しかし、鍵盤とギターと詩が心地がいい。 白い。だが不気味。 変な例え方かもしれないが世界の終わりのような曲だ。 黒い、黒い、暗い、白い、黒い。 あ、白い。 今、瞼の裏で光った。 瞼をそっと開ける。 窓ガラス越しの空は黒の中で光っていた。 とても似ている。 自分はそれを知っている。 フラッシュバックしていた。 自分の中の黒い黒い暗い黒い記憶の中でそれは閃光の如く走っている。 雷のようだ。 白い。不気味だ。
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