over

1/2
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

over

どんより曇っているそれを見てため息をつく。 振られてすぐは絶望感だけが心を占めていたけれど、今冷静になってみて、喪失感が芽生え始めてきた。「これからどうしよう」って。あの子のことが好き。だけれどもうチャンスはない。 でも、せめて友達関係は失いたくないから。だから──今はそのためにがんばろう…… 教室に着くともうすでにあの子が来ていた。みょうな、心臓がジリジリ痛むような緊張が走った。 席に近づく。1歩1歩。近づく。 「……ぉ、おはよう──」 ただの挨拶。なのに、なんだろう、この気持ち……まともに「おはよう」が出てこず、喉につっかえた。 彼女はなんとも掴めない表情で「おは……よう……」と返した。 それだけのことなのに、振られる前後でこんなにも変わってしまう。そんなこと今まで知らなかった。甘く見ていた。 関係修復にはもう少し時間がかかるようだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!