第 1 話 の 2 

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「遅い!」 病室に入るなりそう言われ、何よ、せっかく来てやったのに! とムカついた。 秋月先生は術後の患者の横にいて、ガーゼを剥がすなり「膿盆(のうぼん)。イソジン(消毒液)」と言い右手を差し出した。 慌てて膿盆をベッドの上に置き、急いでセッシでイソジン綿球を掴み、手渡した。 するとすぐに「イソジンは乾く時に殺菌するんだ、もっとちゃんと絞ってから渡せ」と怒られた。 「はい、すみません」と言い終わる間もなく「もう一つイソジン」と指示をされ、長鑷子(チョウセッシ)でイソジン綿球を掴み、今度は少し絞ってから手渡そうとした。 すると「こら! セッシの先を上にあげるな! 不潔になる!」とまた怒られて。 その後も、「鉗子(カンシ)立てに指を入れるな!」「処置車の上は物を通すな!」「万能瓶の蓋はすぐに閉めろ!」と文句を言われ続けた。 このせいか、皆が秋月先生の回診に付こうとしなかったのは。 言っていることは正しいことばかりだが、あまりにも小うるさい。 あー、腹が立つ! そう思いつつも苦笑いでやり過ごし、「すみません」と謝り続けた。
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